上品な床暖房
ただ気をつけなければいけないのは、これはいま存在している種だけを対象に、そこにどのように遺伝子の川が流れ込んできたかを推定したものです。現在に至る前に途切れてしまった流れ、すなわち絶滅してしまった種についてはこの方法では何も分かりません。この枝分かれの図には書かれていませんが、実は途中で途切れている幾本もの流れがあるのです。およそ六〇〇万年前、チンパンジー、ボノボとの共通祖先からも、多くの支流が流れ出していたことでしょう。図2jテナガザル類オランウータンゴリラチンパンジーボノボヒト万年前恥-――----11115001---―--―--111111約1300万年前約1600万年前 約660万年前 約230万年前図2一2 ヒlヽ上科霊長類の系統関係と塩基配列による分岐年代流れを、ミトコンドリアによってたどっていったのです。 ヒト上科の霊長類のうち、ヒトに近いゴリラ、チンパンジー、ボノボはすべてアフリカに生息しています。ということは、わたしたちの祖先ももともとはアフリカに棲んでいたと考えられますが、実際、およそI〇〇万年以上前の人類化石はすべてアフリカから出土しています。一般的にヒト上科の霊長類のうちヒト以外の種、すなわち東南アジアに広く分布するテナガザル類、ボルネオとスマトラに生息するオランウータン、そしてゴリラ、チンパンジー、ボノボを類人猿と呼んでヒトとは区別しています。しかしながら、この区別は正しくありません。ミトコンドリアDNAの分析と化石の証拠をみる限はどのような動物か人間り、わたしたちはまぎれもなくアフリカ類人猿の一種なのです。ただし他の仲間と比べてかなり 048風変わりな特徴をもっていますが。 およそ六〇〇~七〇〇万年前、アフリカには現在の類人猿のような種が数多く存在していました。そのなかから人間へと至る遺伝子の流れを分けたのは、直立二足歩行でした。直立し、二本の足で歩くという他の霊長類にはみられない移動様式は、解剖学上の大きな変化であるばかりではなく、環境への適応にも影響を与えました。 まず両手が移動から解放され、自由に使えるようになったということがあります。このおかけで物を運んだり、道具を使ったりすることがよりうまくできるようになりました。もうひとつは、移動のエネルギー効率です。直立二足歩行は短距離を速く移動するには向いていませんが、長い距離を移動するには、子不ルギーの無駄が少ない方法だということが分かっています。直立二足歩行をする類人猿の環境との関わりは、他の種とはかなり異なったものになっていったことでし↑ヒトはいつヒトになったのか 現在のわたしたちにつながったと考えられる最も古い種は、どこまでたどれるのでしょうか。二〇〇二年七月、中央アフリカのチャドで発見された、約六〇〇~七〇〇万年前のものと考えられる人類化石についての論文が発表されました。この化石種には「サヘラントロプスーチャデンシス」という学名がつけられましたが、みごとな保存状態で発見された頭蓋骨の写真を新聞で見て感動したことを覚えています。骨のかたちからどうやら直立二足歩行をしていたと考えられており、もしこの六〇〇~七〇〇万年前という年代測定が正しいものなら、ミトコンドリアDNAの分析結果を考えるとまさに最古の人類、チンパンジー、ボノボとの共通祖先から分かれたばかりの種であるといえるでしょう。 よく本や博物館の展示で、脳が小さくチンパンジーもどきの初期人類から、大きな頭をもち、すらりとしたプロポーションをした最近の人類種の絵が左から右へと並んでいる図を見ることがありますが、これは誤解を招くものです。チンパンジーから分岐した人類の歴史は、ある時代にひとつの種だけがいて、それが直線的につながったものではないのです。図2‐3を見ていただければよく分かると思いますが、同時代に多くの種が存在し、それらのひとつから遺伝子の流れがつながっていった果てにあるのが、現在のわたしたちなのです。 初期人類の化石については、ここ数年のあいたに重要な発見が相次ぎました。一〇年前にいかれていたことが完全に時代遅れになってしまっているという状態です。また、各時代のどの種がどの種につながっていったのかということについても、研究者によって見解が異なります。ですから、図2‐3には、最新の情報によってそれぞれの時代に生息していたと考えられる種を書はどのような動物か人間図2-3 人類に属する種とその生息年代(Aiello and Collard入れるだけに留めました。↑ホモ属の誕生 細かいことを挙げていくときりがないのですが、人類進化を大雑把に理解すると次のようになります。二〇〇万年前ごろまでの、アウストラロピテクス以前の種は直立二足歩行をしてはいたものの、その歩行様式は洗練されておらず、脳容量も比較的小さいものでした。極端にいえばチンパンジーがまっすぐ立って二足で歩いているようなものです。しかし、ホモーハビリスやホモーエルガスターという二〇〇万年前後に現れた種では、それまでよりも脳容量が大きいという現生人類につながる特徴が現れてきます。 ホモーハビリスの後、一八〇万年前ごろになると、さらに脳容量が大きくなり、全身のプロポーションも変化した種が出現します。ホモーエレクトゥスです。ホモーエレクトゥスの時代は二〇万年前まで続いたので、他の初期人類に比べるとかなり長いあいだ存在していたといえるでしょう。実際、この時代に人類にとって重要な出来事が多く起こっています。直立二足歩行をする以外は現生の類人猿とあまり変わらなかったと考えられるアウストラロピテクスから、いわゆる人間らしい特徴への変化が起こったのが、ホモーエレクトゥスの時代だったのです。 初期ホモーエレクトゥスの最もよい化石は、ケニアのトゥルカナ湖沿いで一六〇万年前の地層はどのような動物か人間図2-4 トゥルカナ・ボーイの全身骨格(写真提供:国立神学博物館 馬場悠男)から発見されているものです。ほぼ全身の骨格が発見され、トゥルカナーボーイと名付けられたこの個体は。一一歳くらいの少年だったと推定されています(図2‐4)。身長は二(八センチあり、プロポーションも、ほとんど現代人と変わらない値を示しています。
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